平和を考える宝塚作品

終戦の日は平和への誓いを新たにする日。奇しくも、宝塚で上演中の宙組「王家に捧ぐ歌」を観劇しました。
3500年前、強大な武力を誇り次々と領地を拡大していたエジプトで、ファラオの後継者と目される若き武将
ラダメスを軸に、囚われのエチオピア妃アイーダと、ファラオの娘アムネリスの愛、戦いへの葛藤などを描く
大作。12年前に星組で初演となった作品の再演です。
 
脚本・演出の木村信司氏の作品は、メッセージ性が強いという点で、ヅカファンの間では好みがわかれる
のですが、私は初演時からこの作品が大好きで、特に台詞から受け取る意味を、こちらの想像力でいくらでも
価値の高いものにしていける点がその理由です。
 
アイーダの「戦いは、新たな戦いを生むだけ」という、惨禍に苦しんだ人の心の叫びともいうべき信念。
アムネリスの「ものごとはいつでも、あるべき道をたどります!」という、権力のど真ん中にいる人間の確信の哲学。
ラダメスが勝利を得て尚、「この広い戦場で、私はなぜか孤独だ…」という、戦いの不毛さへの自問自答。
・・・どの台詞も、その人の立場に立てば、価値観はひとつではないということを様々考えさせてくれます。
 
最後、裏切者として地下牢に閉じ込められたラダメスは「平和は潰えた。すべての希望は消えた」と絶望の淵
に沈みます。しかし「いやそうではない、暗闇でかえって光を得た!愛するアイーダの面影からその光が差し
込んでくる」と感じ、彼女が生きているということこそ、自分が命を懸けて望んだものだ、それが自分の生きる
意味だとつぶやく。。。と、その時、誰もいないはずの地下牢の奥から「ラダメス!」と呼ぶ声が! なんと死を
共にする覚悟でアイーダが先んじて忍び込んでいたのでした。
 
何も思い残すことはないとお互い抱き合う中でアイーダがつぶやきます。「ひとつだけ、できることが残されて
いる」と。「祈ることよ。この世界に愛し合う者たちが死ななくてもすむように。」 ← ここ、いつも号泣
 
そして二人が、さらにはコーラスが平和への祈りと誓いを歌い上げます。
「たとえ今は、夢のように思えても、この身を捧げてそんな世界をいつかきっと。」
「祈ろう明日を。この地上にこそ希望を。人みな時代から時代へと、誇らしく語れるように。そんな世界を、
私は求めていく。」(※文字だけだと青い感じで伝わりにくいですが、メロディがつくと理屈っぽくなくなります)
 
この作品、かなりの回数観たので、歌詞はほとんど覚えています。
とにかく、12年前とほとんど同じ場面に反応して泣いていた…ということは、そのときに置かれている自分の
メンタルとは関係なく、もっと深いところで(自身の普遍的な部分で)この脚本に共感しているのだと思います。
人の志(こころざし)を描いた脚本の作品が好きですが、私の中ではレ・ミゼラブルなどと並んで、ベスト5に
入るミュージカル作品です。