ミュージカル・マーケティング

「プリンス・オブ・ブロードウェイ」をマーケティングの視点から一考。
この作品は、ハロルド・プリンスがこれまでに手掛けた超有名作品をコラージュして、イイトコ取りをしています。
だからとてもわかりやすくて、ブロードウェイの有名ミュージカル作品をたくさん観ていない人も、そのエキス
だけを受け取ればいいという、観客にとっては小難しいところのないラクチンな作品です。
でも役者のレベルが超高いので、ツギハギには決して見えない。
これは日本初演だそうで、ブロードウェイではまだ公演するかは決まっていないそうですが、正直これは相当
「日本」のミュージカル・マーケットを意識して作られた側面があるのではないかと感じました。
 
ハロルド自身も、彼が日経トレンディの取材に答えてこう言っています。
「プロデューサーの視点からお答えするなら、日本の劇場文化に可能性を感じていることも、引き受けた理由の一つだ。
~中略~、世界中どこに行っても、日本人ほど芸術に対して“ハングリー”な国民はいない。ブロードウェイやロンドンの
劇場街で日本人を見かけない日はないし、NYでクラシックコンサートを聴きに行くと観客の10~15%の観客が日本人。
日本人は、君たちが思っている以上に“文化的で上質な暮らし”を求める、芸術的な国民だよ。日本の演劇界もとても
いいマーケットになってきていると思う」
 
裏読みすれば、「日本人はホンモノを求めてはいるけれど、国内ではそれに値するレベルの舞台が観られないので、
実験的に濃厚エキスが詰まった作品に触れさせて、日本人のミュージカルの目を肥し、これをタッチポイントとして
今後続々と新しいブロードウェイ作品を売り込んでいこう」ということでもあるのではないでしょうか?
 
そういう中でターゲットとされるのが私みたいな人間ですね。
世界に類をみない「宝塚」という独自のエンターテインメント性が好き、そして時には海外モノの日本版「東宝
ミュージカル」も楽しむ、でも潜在的には「もっとハイレベルなものに感動できる芽をもっている」・・・こういう
人種が、実は日本のミュージカルマーケットに相当数いるのではないかと思われるのです。
 
ただ、彼はインタビューで「過去を掘り起こすものとして今回の作品を作っていくのではなく、新鮮な体験として
自分たちの作品を作っていきたい」と話していますが、決して今までの評価をそのまま強引に押しつけようとするの
ではなく、「日本人」や「日本の舞台文化」に自然と溶け込んでいけるよう、相当配慮して作っているという好印象を
もちました。
 
で、柚希礼音はその意味では客を劇場に誘導する有効なきっかけになっていますし、動員という意味では非常に
効果的です。タッチポイントはその後のブランド形成にも重要な役割を果たしますから、人寄せといっても、
世界一級のプロと共演できる実力と話題性もないといけません。
その点、宝塚で6年もの間トップを張り、トップオブトップとしての地位を築いてきた彼女が、宝塚退団後の
初舞台であることは、タイミングとして非常によかったわけです。
彼女はたぶん、いい意味で子供のような吸収力があり、相当な伸びしろがあると思うので、この公演後半に
もう一度観てみたいという気持ちが強くなりました。
このリピートへとつながる「あと引き感」もマーケティング的な戦略ですね!(笑)